2023.02.14

島でよりみち

special issue

車移動がほとんどの淡路島では、ふだん歩くことが少ない人も多いのでは? 国道沿いでない道や、ちょっと中にはいった小道には、まだまだ知らない淡路島が広がっているかも。
そんなことを思って、気の向くままによりみちしてみた。

 


 

小道の先にあらわれる、隠れ家的珈琲焙煎所

店主の吉田さんは、20歳ではじめて飲んだ喫茶店のブルーマウンテンにとても感動し、自宅でサイフォンコーヒーを淹れるほど大の珈琲好きに。趣味でコーヒーを楽しんでいたが、定年退職前、旅行先の屋久島で出会った喫茶店の店主と話が盛り上がり、「自宅で焙煎ができますよ」と言われたことがきっかけで焙煎をはじめた。「たくさんの豆を購入する方がお得だったので10キロ購入したけど、なかなか一人では減らなくて…。」そんなとき三熊山で出会う散歩メンバーに相談すると、「なら販売すればいいんちゃう?」と言われ、2021年10月に「洲本珈琲倶楽部」を誕生させた。焙煎方法は、インターネットなど独学で学んだそう。「豆を購入してもらうと、自動的に倶楽部メンバーになります(笑)。といっても、名ばかりで何もないんですけどね」と冗談交じりに言う吉田さんだが、2カ月に1回倶楽部の有志があつまって、山手福祉会館で珈琲を飲みながら懇親会をしているらしい。珈琲を片手に語らいあう仲間っていいなぁ。

毎朝飲んだ珈琲の出がらしは玄関などの消臭に活用している。

一緒に住んでいるお孫さんと。

看板もすべて手作り!

洲高生が店前をよく自転車で通るので、口コミで学生のお父さんやお母さんから問い合わせがあったりするらしい。

吉田さんオススメのキリマンジャロを購入。すでに袋から珈琲のいい香りがする。中には抽出のポイントが書かれた紙が入っていた。こういう親切な気配りがうれしい。

<info>
取り扱う豆はビクトリーマウンテンなど8種類
深煎りや浅煎りなどオーダーOKで、事前に伝えておくと豆を挽いてもらうこともできる
※前日までの事前予約制

洲本珈琲倶楽部(YOSHIDA COFFEE)
洲本市物部1丁目4-12
TEL.090-3268-3492(前日までの予約制)


 

人と人を結ぶ、小さな本棚

店先にひっそりとたたずむ「福老文庫」と書かれた小さな本棚らしきもの。通るたびにずっと気になっており、ついに今回お話を聞くことができた。物部でまちの電器店を営んでいたご主人と奥さんは大の旅行好きで、昔訪れた旅行先のヨーロッパで、店先や家のそばに誰でも自由に本を愉しめる棚を見つけ、気軽にリユースをする考えにとても惹かれたそう。そして仕事が落ち着いたタイミングの2年半前、店前に設置しようと思い立つ。特に宣伝などはしていないが、私のように気になり訪れる人がいるらしく、中には毎週通う人もいるらしい。福老文庫の由来は、奥さんがフクロウ好きなので、その言葉に当て字で「福」が来るようにと、ご主人が老いているから「老」を使うことになったとか(笑)。「本は誰でも持ち込み可能。持って帰ってもいいし、返してくれてもいいし、自由に愉しんでもらえたら」とご主人。

棚には本がぎっしり。様々な人が持ち寄っているのでジャンルもバラバラ。だけどなんとなく統一感がある気がある気がする。

本が並ぶ中に1冊のらくがき帳を見つけた。感想などを自由に書くノートらしい。

今回私も2冊持ち帰った。1993年の暮しの手帖はきっとレアではないか!?

記念に作った「福老」と書かれたオリジナルのハンコも発見。

福老文庫の前でパチリ。いい笑顔!

取材時話はつきず、いろいろなものを見せてもらった

国内はなんとすべて制覇したお2人。コロナ前は海外旅行にも行っており、こちらはinベルギー。レンブラントの「夜警」の舞台になった銅像前で撮ったもの。「駐車場に車がなかったら、『旅行に行ってたん?』って近所の人に言われるねん(笑)」と奥さんが教えてくれた。

以前は電化製品の販売や修理などしていたこともあって、取材時、今はほとんど残っていない貴重なシャープのラジオを見せてもらった。レトロでとてもかわいい。

\奥さんのフクロウコレクション/

こちらはご主人手作りの三味線。DIYが得意らしく、「日々遊んでます!」と話していた。

物部電気商会(福老文庫)
洲本市物部1丁目6-18
TEL.0799-22-0143


 

なんだかずっと居たくなる、そんな喫茶店

物部のマルナカから第三小学校の方に向かって歩いていくと、喫茶店を見つけた。早速中へ入ってみる。外観で見るよりも席数が多く、店内は昭和レトロな雰囲気でおしゃれ。マスターにお話を聞くと、あえて外からは見えにくいような窓ガラスにしているらしい。なるほど、人目を気にせずゆっくりしてほしいというマスターの気配りだったのか。創業55年で、お母さんと一緒にお店をしているとのこと。喫茶メニューも充実しており、人気はオムライスとサンドイッチ。午前中はモーニングも人気なんだそう。この日は夕方だったのでスイーツが食べたくなり、プチホットケーキとバナナジュースを注文した。バナナジュースはすっきりした甘さ。ホットケーキは昔ながらの味で食べやすいサイズにカットされているのがグッド。お話を聞いている間、次々と順番に常連さんが入ってきてみんな楽しそうに話している。ゆったりとした時間の流れが印象的だった。

ほぼ毎日朝と夕方に来られる常連さん。お顔は恥ずかしいとの理由で背中のショットを撮らせてもらった。初対面だったにも関わらず、ずっといろんな話をして私もなんだかなじみ客気分。常連さんはマスターの同級生の方が多いらしく、コロナ前は年に5回も同窓会をするほど仲良しだったらしい。年に5回って、それはもう同窓会でなく飲み会では…(笑)「この間3年ぶりに同窓会できてうれしかった!」とマスター。

あたたかみのあるオレンジの照明でとても落ち着く店内。ワイン箱のような壁紙も雰囲気がある。おひとりでゆっくりされている方もいた。

店内にはジャズやピアノの演奏が流れている。音楽好きのマスターは、壁面にもCDをディスプレイ。とくに好きなアーティストはアンドレ・ギャニオン※らしい。

※カナダの作曲家、ピアノ奏者

 

おわりに・・・物部・上物部エリアをまわってみて

会社が物部にあるのでいろいろと知っているつもりだったが、歩いてみるとまだまだ知らないことだらけ。大人になると「知らないこと」がどんどん少なくなるので、今回のよりみちで「新たな発見や出会い」があったことがとてもうれしかった。同じように散歩している人にもお話を聞いたりしたかったのだが、この日は極寒で出会わず(涙)。それは次回の楽しみにしたいと思う。今度は道ゆく誰かともお話したい!ということで、こちらの特集は今後コーナーで連載することになりました。お楽しみに!

 

〇おまけ〇

よりみち中に気になる看板を発見。

うぅ。なんだか切ない・・・。けど哀愁漂う感じが逆にいい。

 

 

<撮影/文:チル子>
※写真は一部提供分あり
情報は2023年1月末時点のものです。

ダン編集部

この記事を書いた人

ダン編集部

淡路島の地元情報誌ダンの編集部です。


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