2021.12.09

妄想008:ある日の夢

妄想恋愛研究所

昨晩、夢を見た。

いまだかつてないほどの

素敵な夢だ。

日頃の鍛錬の成果が

出始めているのかもしれない。

 

高校の同窓会。

いつもは参加しない私が

久しぶりに出席してみた。

 

随分会っていないせいか

そこまで話が弾む友人もいない。

ただ、やたら懐かしいと

セクハラまがいのボディタッチをしてくる

オッサン(同じ年だが)、

家族の愚痴ばかり言う女友達A、

敵対するように仕事の自慢ばかりをしてくる

シングルの女友達Bなどなど。

 

はっきり言って

どれも興味がない。

懐かしさもない。

 

退屈を隠し、つくり笑い。

こらもう飲むしかない!

 

レストランの会場の

学生っぽいやたら若いボーイから

カクテルグラスを1つ2つ。

ああ、面倒、もう全部置いていってくれい!

 

 

「ちょっと飲みすぎたみたい」と

うるさいやつらから逃げ出し

1人テラスへ。

真冬のテラスになんか誰もいない。

凍えるけど、落ち着く。

 

妄想恋愛のためとはいえ

来るんじゃなかった。

家でネットフリックスでも見て

自堕落に過ごしている方がよっぽど

マシだ。

 

この服、結構高かったのに

奮発したんだよなぁ。

大人の色気が漂うラインなんですとかいう

うたい文句に騙されて・・・

 

ブツクサひとりごとを言っていると

突然、私の横に

さっきのボーイくんが来た。

「あ、テラス、出ちゃダメだった?

ごめんなさい。」

「そうじゃないです。ちょっと僕も外の空気が吸いたくて。」

 

まつ毛が長く、澄んだ瞳

少し寂しそうな笑顔が印象的だった。

 

「仕事中なのに、いいの?」

「お料理もドリンクももう随分出ちゃってるので

用事なさそうです。

あと、俺、本当はこの会場、ヘルプで来てるだけで

適当にあがっていいみたいなんで。」

「あ、そうなんだ。おつかれさま。」

 

私は、そう言って、テラスのベンチへと

移動した。

すると、彼もストンと私の隣に座った。

 

肩と肩が一瞬ふれ、驚いて私が振り向くと

彼の短髪がふわっと目の前を横切る。

 

え?

 

少し、話しませんか?

「どうして?」

「ダメですか?」

「ダメではないけど・・・」

 

「同窓会って楽しいですか?」

「何?それ皮肉?」

「いやいや、そういう意味じゃなくて。

気合入れて来てそうだったのに、

つまんなさそうだったから、結構目立ってましたよ(笑)」

「うそ?バレないようにしてたつもりだけど」

「いい年して、嘘つくの下手ですね(笑)」

「ちょっと!」

 

「でも、嘘つくのが下手な人、

俺は嫌いじゃないです。いいと思います。」

「バカにしてるだけでしょ?」

「うらやましいんだと思います。

俺は嘘が全然バレないタイプだから

最近どれが本当の自分の気持ちがわかんなくなってきて。」

「悩んでるね~、オバサンが

相談のってやろうか?(笑)」

 

少しの間、沈黙が続いた。

相談のるとか冗談でも

鬱陶しかったんだろうか。

若い子の考えてることなんか

わかんない、さあ、もう行こう。

 

「あ、そろそろ戻るわ。」

 

「このまま、抜けませんか?」

「え?」

 

強引に手を引っ張られ

私自身は、そのラブコメのような展開に

ボーっとなり、そのまま店を出てしまう。

握られた手が熱い、顔も熱い。

 

着いた場所は、レストラン近くの錆びれた公園。

さみしい公園に、

化粧濃いめのパーティー服オバサンと

ボーイの制服の男の子。

なんか滑稽・・・

 

「俺、彼女いるんです。」

「聞いてないけど!(笑)

なに?予防線?オバサン、好きになるなよって?

安心して、既婚者だから!!」

「え?なんか残念。」

「さっきから、何なの?大人をからかうんじゃない!」

「ハハ(笑)・・・そうじゃなくて、本当に残念です。

彼女はいるけど、なんか違う感じで。しっくりこないというか。

嫌いじゃないけど、好きなのかわからなくて・・・

最近、あんまり会わないようにしてます。」

「ひどいな。彼女、可哀想じゃん。

…悩みごとってそれ?」

「違いますよ、悩みごとがあるようでないような。

漠然と楽しくない感じが、毎日続いているのが

息苦しいというか、たまに怖くなる日もあって。

でも、どうしたら解消されるのかもわからない。

・・・あなたを見てたら、

なんかその答えを持ってる気がしました。

また……..

たまに会ってもらっていいですか?」

 

彼は、子犬のようなまなざしで

私をじっと見た。

これに「イエス」と言わない人、いる?

 

突然、私の携帯が鳴った。

さっきの女友達Aからだった。

「ちょっと、どこいるの?二次会行くよね?」

 

あ、そだね

 

いつもいいところで夢は終わる。

ここで目が覚めるパターンね。

はいはい、私の妄想もここまでか。

 

突然、彼は私の電話をさえぎり

悪戯っ子のような笑みを浮かべ

大丈夫。今晩も会えるから。続きからはじめよう。

 

その笑顔の残像の中、飛び起きた。

今晩も彼に会えるのだろうか。まさかね。

でも、本当にそうだとしたら・・・

 

ニッチモ・サチ江

この記事を書いた人

ニッチモ・サチ江

淡路島出身、神戸在住。妄想恋愛研究家。 「春が来ようと夏が来ようと、イブ・モンタンの「枯れ葉」が脳内に流れております。誰か、助けて!」


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